ヌードモデルに選ばれた姉


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一章 エピローグ

一週間後。部室

「隆。先週の絵はまるで駄目だ。もっとしっかりしろ」
 副部長が珍しく怒っていた。
 白鳥部長とは違いこの副部長は体育会系のカラッとした性格で、隆にとっても話しやすい先輩であったが、今回の出来の悪さに相当怒っているようだった。

「すみません」
「自分の姉だからって手を抜いて書いたわけではないだろうな。こんな出来ではとても発表できない」

「いえ、そんなことは」
 隆は決して手を抜いたつもりはなかったが、気が乗らなかったのもまた事実だった。

「まったく仕方がないな。それじゃこの写真をやるからもう一度書き直せ」
 少し含みのある顔をしながら、副部長は写真を取り出す。

 隆に渡されたのは一枚の写真。
 それは隆にとって愛すべき姉の全裸写真。
 当然モザイク等は無く、恥辱のためか強ばった顔も、可愛い乳房も、その特徴ある陰毛も全て写されていた。
 しかも写真の姉は全裸でありながら、身長を測るラインが引かれた壁の前に立ち、なぜか直立不動のポーズを取っている。
 どう見てもモデル中に撮られた写真。いや、モデルのための写真には見えなかった。

「先輩、これは何ですか」
 震える手で写真を見る隆。

「これか? これは学校に提出するモデルの身体資料の一部だ。もちろん誰でもアクセスできるデータではないが3年の美術部員なら自由に取り出せるぞ」
 自慢げな表情をしながら副部長は話す。
 副部長にとって姉はクラスメートに当たる。
 今の副部長な態度はどこかクラスメートの裸を自由に見られる特権に酔っているように感じられた。

「こんなもんが学校のサーバーに……」
 副部長が言った言葉。
 裏を返せば姉の全裸画像が学校の管理下にあり3年の美術部員や教師なら自由に閲覧出来るという事実。

「これまでのモデル全裸写真とかもあるから見たければ早く3年になって偉くなることだな。部長になれば高レベルアクセス権がもらえるからもっと凄い画像も見放題だぞ。ははっ」
 豪快に笑う副部長。

「部長…… 高レベルアクセス権……」
 隆は姉の裸、いや、今まで選ばれた全モデルの全裸画像が存在する事実にショックを受けていた。
 しかも裸体のマグショット写真だけではないもっと凄いものがあるという。
 だが、1年の平部員である弟には閲覧どころか資料の存在を確認することすら出来なかった。

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自宅

 隆は自室で副部長が話していたことを考えていた。
 副部長いわく部長になれば、高レベルのアクセス権がもらえる言う。
 高レベルとなればあの日に作られたと思われる資料の内容もわかるし、姉の裸体画像を学校サーバー内から消去することが出来るかもしれない。

―――そうだ。僕が部長になればいいんだ。そうすれば姉の画像を消去出来るし、このふざけたヌードモデルのシステムだって廃止に追い込める。

 隆は先ほど貰った姉の全裸写真を取り出す。
 写真をパソコンに取り込み、姉の裸をディスプレイに表示させる。
 ツールを駆使し、体のライン、ほくろの位置、胸の形から太ももの特徴まで、徹底的に姉の裸体の秘密を暴いていった。
 そしてそのデータを元に書きかけた姉のヌード画を修正していく。
 部室でいやいや書いていた絵ではない。
 本物の絵。世間に通じるヌード絵画を生み出す決意のもとで。

―――まずは、この絵で全国を目指す。それを足がかりに部長を目指すんだ。

 ここまでなんの目的も持たず生きていた隆が初めて決めた目標。
 手が届くかはわからない。
 それでも愛すべき家族のためにその目標へ進む決意をし、弟は姉の裸を書き続ける。

[一章 終]


forr / 2014年12月01日
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