隆は先ほどの行われた部活動の内容を姉に教えようと、急いで自宅に帰った。
玄関に姉の靴があるのを確認し、早足で居間へと向かう。
居間には姉の姿。
「姉さん。今日、美術室でヌードモデルの選考会があったんだけど、そこで姉さんの名前が」
興奮気味に話す隆。
その声を聞き、姉が隆のほうをゆっくりと振り向く。
「次のヌードモデルに私が決まったと言うんでしょう。さっき白鳥が『一生忘れられない貴重な体験をさせてあげる』とか言ってたら、こうなることはわかっていたわよ」
大声で騒ぐ隆とは裏腹に姉は淡々とした声で話した。
「それでどうするの」
隆は姉の冷静さに驚きながら話を続ける。
「美術部が正式に決めたんでしょう。となると近いうちに学校側からヌードモデルのお願いが来る。もし断ると学校にいられなくなるだろうし、ここは我慢するしか無いでしょう」
相変わらず淡々と話す姉。
全ての状況を理解し、諦めているような雰囲気だった。
「姉さんはそれで平気なのかよ。悔しくないのか。裸なんだぞ」
姉の諦めきった表情にムッと来た隆は強い言葉で問いつめた。
その声を聞き、姉はゆっくりと立ち上がる。
真剣な眼差しで弟を見た。
そして、
「平気なわけ無いでしょ!! あの白鳥が見ている前で裸にならなくてはならない。しかもクラスの男たちがいる前で!!
考えただけで頭がどうにかなりそう」
と、突然大きな声で怒鳴り散らす。
「姉さん。ごめん」
隆は当たり散らす姉を見て、ただ戸惑うだけだった。
姉は普段はおとなしく、こんな態度をとる女性ではない。
その姉をここまで取り乱させる白鳥部長の存在。
その宿敵の前で裸になった姉は今後どうやって白鳥部長に対峙するのか。
2人の詳しい事情を知らない隆から見ても、姉がもうどうしようもない状態に追い込まれているのがわかった。
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それから2週間後。モデル当日。
隆は普段より早く目が覚めた。
今日は姉がヌードモデルのやる日。
弟にとっても姉にとっても忘れられない日になるのは間違い。
隆が居間に行くと姉は既にセーラー服を着て登校準備をしている。
「姉さん。おはよう。もう学校に行くの?」
隆はあえていつもと同じような挨拶をする。
「おはようさん。今日は人混みを避けたいから早めに行くね」
姉もいつも通りの明るい態度を見せながら居間から出て行く。
朝の様子を見る限り姉の機嫌や行動は普段と同じに見えるが、美術部員である隆には分かる。
なぜ、姉が人混みを避けるようにこんなに早く登校するのか。
なぜ、椅子から立ち上がる際にスカートを手で抑えながら立ち上がったか。
「姉さん……」
ヌードモデルになる生徒は当日下着をつけてはいけない。
理由は下着の線が残るからと言うことになっている。
しかし部長曰く『そんなの表向きの理由で嘘に決まっているじゃない。金を取るモデルではないんだからさ』と言う。
モデルにノーパンノーブラ登校をさせる本当の理由は教えてくれなかった。
ただ、部長の考えることなんだから、ろくでもない理由なのは分かっている。
そのろくでもない理由のために、姉は一日ノーパンノーブラで学校生活を過ごさなくてはいけなかった。
330円