超短編


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 私は近くにある銭湯が大好きだった。
 物心ついた時は既に銭湯大好きっ子だったから生まれた時から好きなんだと思う。 

 しかし小学3年になったあたりから番台に座るカッコイイお兄さんが気になりだした。
 お兄さんはいつもニコニコしている優しい人だった。
 素っ裸で走りまくって困られたこともあったが、子供心には最高に楽しい時間であった。

 そんな至福の時も体の成長とともに羞恥心が邪魔をし始める。 
 ブラを初めて付けて銭湯に行った時に気まずさと言ったらそれはもう凄かった。
 お兄さんもブラの話題に触れていいのか明らかに困っていた。
 私は服を全部脱ぎ、全裸のまま番台に行きお兄さんに話し始める。
 もちろん恥ずかしい。膨らみかけの乳房も割れ目も丸出しなのだから。
 お兄さんも最初こそ驚いたが、すぐいつもと同じように相手をしてくれた。
 視線を変にそらさず、ずっと顔を、そして体を見てくれた。照れくさかったが嬉しかったりもした。
 2人の関係は男と女なんて下衆なものではなく神聖なものに思えたから。

 私はそれからもずっと週3日ペースで銭湯に通った。
 中学生になり少しずつ生えていく陰毛も、高校生になりどんどん大人の女性の体になっていく過程もお兄さんに見せ続けた。
 お兄さんはタオルで体を隠している時は顔を。タオルを持たない時は裸体をじっと見ながら話す。それにいやらしさはない。むしろ気持ちよさすら感じた。


 それから10年以上の時が流れた。
 私は30近くになりお兄さんは渋いオジサマと言ったほうがしっくりする外見になっていた。
 そんなお兄さんを尻目に私は今日も銭湯で体を洗る。 
 ただしいつもとは違い念入りに洗った。下の毛もカミソリでムダ毛を整えきれいに形を整えた。

 風呂から出て体を拭いた私は覚悟を決め番台に近づく。
 一瞬ぎょっとした顔を見せるお兄さん。いくら見慣れた裸とはいえ風呂から出ていきなり全裸のまま番台に行くことは少ない。
 どうしたのと優しい声。私は直立不動っぽい少し堅苦しい立ち姿のまま伝えたいことを言う。
 あえて体は一切隠さなかった


「来月結婚することになりました」

 お兄さんは驚きながらも祝ってくれた。
 あんな小さな子が結婚とは立派になったものだと言いながら、それなりに育った丸みの帯びた乳房と陰毛に何度も何度も視線を向けた。
 乳首に目線を向けられるたびに良い年して照れくささを感じたが、今更タオルで体を隠す間でもないと思いずっと晒し続けた。

 このお兄さんは誰よりも私の体を知っている。
 いつブラを付けたのかもいつ毛が生えていたのかもしっている。
 持っている下着の種類や今日のパンツの色だって知られている。
 結婚する旦那に少し悪い気がしたが、このぐらいは許してほしいと思う

 私は自分が露出狂だとは思わない。
 でもお兄さんに見せ続けた裸の時間は決して忘れない大切な思い出なのは間違いない。

 そしてこれからも思い出を作るために、この銭湯に通い続ける。 
 子供を産んで体のラインが崩れても裸のまま喋りかけるつもりだ
 お婆ちゃんになり女として見られなくなっても同じ。
 その時が今から楽しみだ。おなじくヨボヨボになった爺さん姿のお兄さんに向かって私はこう言うつもり。

「お互い楽しい人生だったね」

終わり





搾精病棟 THE ANIMATION 〜タチバナ編〜搾精病棟 THE ANIMATION 〜タチバナ編〜

 

 


 
 

 


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