水泳部の伝統


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エピローグ

 自宅

 祐一は居間で妹の帰りを待っていた。
 兄として妹の水泳に掛ける気持ちは理解しているつもりだった。
 しかしあの水泳部に妹を任せる気にはどうしてもなれない。
 今一度、妹の気持ちを確かめよう。
 もし妹があの部は嫌と言えば学校に掛け合って辞めさせるつもりだった。
 
「ただいまー。あ、兄貴。もう帰ってきたんだ」
 セーラー服姿の妹が祐一がいる居間へと入ってくる。

「お、おかえり」
 先ほど見た妹の丸みを帯びた乳房が頭を過ぎり、祐一は思わず赤面してしまう。
「兄貴、顔が赤いよ、熱でもあるの?」
 祐一の顔を不安そうに覗き込む妹。
 ふわっと妹の香りが漂い、セーラー服の襟元から谷間がチラリと見える。

「いや、何でもない。それより水泳部はどうだった?」
 祐一は妹の胸の残像を振り払うように首を数回振って話す。

「やっぱ厳しいね。水泳のレベルは高いし、変な伝統はあるしで嫌になるよ。でも男子と女子が完全に分かれているのはいいね。イヤらしい男と一緒にあんな練習が出来るかっていうの」
 サバサバした表情で妹は言う。
 平均より大きい胸のせいか妹は男子からエロい目で見られることが多かった。 
 男に対して不信感すら抱いている妹にとって、男女分かれた水泳部というのは魅力的な環境に思えた。

「……」
 話を聞いて祐一の表情が強張る。
 妹はしらない。今日の恥ずかしい姿も男に見られていたことを。
 そして近いうちに皆が見ている前で全裸自己紹介をやらされることも。

「まぁ、なんとかやっていけそうな感じはしたね。コーチは間違いなく優秀だし信頼していいと思う。あの水泳部なら日本一だって取れるよ」
 妹は真剣な眼差しで夢を語った。
 それは小さい頃からよく言っていた日本一を目指す夢。

「そうか……」
 祐一はそれ以上何も言えなかった。
 妹の心は決まっている。あれはどんなことがあっても水泳部員を続ける覚悟の目だ。
 いくら祐一が全裸自己紹介をやらせたくないと思っても、それをやめさせる手段はない。
 つまり数日後には、まだ誰にも見せたことがない妹の裸が晒されることになる。
 あの妙にプライドが高い妹が全裸のままで隼人の前に立ち、頭を下げるんだ。
 屈辱的な姿を男に見られる妹の心境は想像を絶するものがあるだろう。
 だが、見る立場のものにとってはそんな妹の気持ちを全く関係ない。
 隼人は大喜びで妹の裸を隅々まで見る。
 たとえ相手が友人の妹であり、顔見知りだって容赦はしない。あいつはそういう男だ。
 その状況を考えただけで祐一の腹は煮えくりかえった。

 しかし、それで隼人を恨むのは筋違いであることを祐一は理解していた。
 なぜなら、隼人は水泳部の伝統に従っているのに過ぎないからだ。
 その伝統に乗っ取り、隼人には新入生の裸。つまり妹の全裸を見る権利がある。
 そして新入生の妹は自分の裸を先輩たちに見せる義務がある。
 これは水泳部が長きにわたって受け継いできた伝統。
 今は脱ぐ立場の妹も、来年になれば新入生の裸を見る側に回る。
 水泳部の部員は誰もがそういう体験をして成長していくのだ。
 そこに矛盾はない。

 妹は自らの意志でこの水泳部に飛び込んだのだ。
 それは水泳部の伝統を守り、承諾したのと同じ。
 例え、その伝統がどんなに理不尽で羞恥に満ちたものであっても、部外者の祐一がどうこう言う問題ではなかった。

「本当に頑張れよ」
 祐一は小さくな声でつぶやく。
 これだけ辛い思いをするんだから必ず結果を出して欲しい。
 そう心から願う兄であった。

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あとがき
もう少し続けます

おーばーふろぉ〜熱く交わる姉妹のタブー〜 3【単行本版】おーばーふろぉ〜熱く交わる姉妹のタブー〜 3【単行本版】

for / 2015年03月01日
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