ヌードモデルに選ばれた姉


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 翌朝
 パジャマ姿の佳子は制服に着替えるためタンスの戸を開けた。
 タンスに掛けている制服を取り出し、なにやら考えこむような仕草を見せる。
 朝の清々しい雰囲気とは裏腹に彼女の顔は悔しさで覆われていた。
 なんでこんなことを。様々な思いを押し殺しながら、彼女はパジャマと下着を脱ぎ全裸になった。
 いつもならここで新しい下着をつけるが、今日からはそれすら許されない。
 少し躊躇いながら、全裸のまま直接スカートに履き、ブラをつけることなくシャツに腕を通す。

 制服に着替えた佳子は鏡の前に立ち、その場でくるりと回る。
 スカートがひらりと捲れ、太ももが露出するが、比較的長めのスカートは太ももより上にめくれることはなかった。
 だが、お尻の上にじかに触れるスカートの生地の感触は嫌をなしに自分がノーパンであることに意識させられた。

「……早く行かなくちゃ」
 やや頬を赤らめながら佳子は家を出た。
 時間は午前6時30分。朝も早く周りにはまだ誰もいない。
 人の気配がないことに安心した彼女はゆっくりと通学路を歩き始める。
 その時だった。突然突風が噴きスカートの裾が少しだけ捲れた
「きゃ」
 思わず佳子はスカートを抑えながら座り込む、
 もちろん先ほど確認したとおりスカートが多少めくれても太ももまで捲れることはない。
 周りには人もいないから見られる可能性もまったくない。
 それでも彼女は顔を真っ赤にし座り込んだ。
 スカートの下には下着がない。その不安がそうさせた。

「くっ」
 このままでは白鳥の思い通りだと思った佳子は軽く舌打ちを打つ。
 そしてスタッと立ち上がり歩き始める。
 先ほどとは違い、背筋を伸ばし、あくまで自然体で歩こうとした。
 多少の風が吹いても手でスカートを抑える動作も控えた。
 むろん、パンツは履いていないのだから自然と顔は赤くなり、すぐ内股歩きになっていく。
 それでも彼女は普段通りの歩き方を心がけた。
 それはまるで決して負けないという意思表示のように。



 無事、学校に着いた佳子は誰もいないことを確かめながら階段を登り教室へと急いだ。
 今のうちにカバンを教室に置いて、どこかに隠れるつもりだった。
 そして始業時間が少し過ぎたあたりに戻れば、遅刻にもならずに朝の下着検査も回避できる。
 むろん、こんなことで一日の検査がかわしきれるとは思えない。
 しかし少しでも嫌がらせをしてやらなくては気がすまなかった。

 扉を開け、教室の中に入った佳子が思わず立ち止まる。
 額に汗が流れ落ちるのを感じた。
 それもそのはず。教室には予想だにしない先客がいた。

「あら、早いわね。どうしたの」
 その人物は教室の窓を大きく開け、髪の毛を風になびかせながら佇んでいた。
 まるで、恋人を持っていた少女のようにニコニコしながら手を振っている。
 どこから見ても無害な優等生に見えた。だが佳子だけは知っていた。
 この仮面の裏に隠された邪悪な意志の存在を。

「白鳥こそこんな時間に来ているなんて珍しいわね。よほど暇なの?」
 佳子は動揺を表さないように言い返した。
 もちろん、白鳥がこんなに早く来ていたのは想定外だった。
 なぜ?の疑問が頭をかすめる。

「わざわざ待ってあげたのにつれないわね」

「あなたに待ってもらう理由なんて何も無いわ」
 そう言うと佳子は自分の机にかばんを置いた。

「いや、あるでしょう。あれよあれ」

 しつこく迫る白鳥を尻目に佳子はこれ以上付き合いきれないとばかりに出口に向う。
 そのまま教室を出ようとしたが。

「今から検査するからすぐ脱いで」
 背後から白鳥の声がした。
 それは教室という場に相応しくない言葉だった。

「いやよ。あなたの前で検査なんてお断りよ」
 歩みを止めた佳子は強い言葉で拒絶した

「ヌードモデルのアンタがそんなわがままを言っていいと思っているの。これは渡部教師の許可も取っているのよ」
「……検査を拒否するとは言ってないわ。後で美術準備室に行くから他の女子部員でも呼んどいて。それでいいでしょう」

 それは彼女が出来る精一杯の妥協案だった。

「ん?下着検査も準備室でやると思ったの? たかが胸とあそこを見るためだけにそんな手間は掛けないわ。ここでするのよ」

「ここって白鳥、あなた頭がおかしいんじゃないの?」
 予想だにしなかった話を聞き、目を丸くする佳子。
 正気の沙汰とは思えなかった。
 今は誰もいないとはいえ、ここは教室。
 いくら時間が早いと言っても、いつ誰が登校してくるかもわからない。
 事実、廊下を歩く人の足音が増え始めていた。

「失礼ね。私はもちろん正気よ」

「そんなことになって困るのは美術部じゃないの?」
 佳子は白鳥の側まで行き、問い詰めた。
 もし美術部が佳子の下着検査をしているところを見られれば確実にヌードモデルとの関係性が疑われる。
 美術部のせいでバレたとなれば、ヌードモデルの規約に違反するはず。

「なんで私が困るの? 人が来て困るのはアンタだけなんだから、早く脱ぎなさいよ」
 見られて困るのは美術部も同じなのに白鳥はそんな弱みを一切見せない。
 それどころか余裕すら感じられる。

 佳子の顔に焦りの表情が浮かぶ。
 読めない。彼女には白鳥の手の内がわからなかった。
 このままではクラスメイトたちが来てしまう。
 そうなった場合、白鳥はどうするのか。
 本当に無関係な生徒に下着検査を見られてもいいつもりなのか。
 この自信の根拠はどこにあるのか。

「わかったわよ」
 もう時間がないと思った佳子は制服の裾を掴む。
 このまま硬直状態が続けば、もっと悪いことが起こる
 これは白鳥と何度もぶつかってきた彼女だからわかる直感のようなものだった。

 彼女はシャツを一気に捲り上げようと腕を上げた。
 しかしシャツはヘソより少し上までしか上がらなかった。
 当然、乳首はおろか下乳の盛り上がりすら見えていない。

「ふふ、それじゃ臍しか見えないわよ。もしかして焦らしているの?」
 おかしくてたまらないという顔で白鳥が言う。
 女性として肌を無意味に晒したくない感情が本能的に働くのは当然のこと。
 それがわかっているのにあえてそう質問したのは明白だった。

 佳子は白鳥のバカにした問に答えることなく、制服を更に持ち上げ、高校3年としては平均的に盛り上がった初々しい乳房をさらけ出す。

(窓ぐらい閉めてくれてもいいじゃない)
 無言のまま恨めしそうに窓を見る佳子。
 窓はなぜか大きく開けられてた。
 そこから入る朝の光によって乳房は照らされ、乳輪の淡いピンク色をより強調していた。

「相変わらず綺麗なおっぱいね。どう?こんなところで脱がされる気分は?ヌードモデルの時とは全然違うでしょう」
 まるで、その言葉を裏付けるかのように彼女の乳首はやや赤みを増して尖っていた。

「ふん」
 耳まで赤く染めた佳子はぷいと顔を背ける。
 実際のところ白鳥の指摘はあたっていた。同じ脱衣でもヌードモデルと検査ではまったく違っていた。
 教室という馴染みがあるところで正当な理由もなくただ脱がされる行為はより彼女の心を苦しめた。

「上はもういいわ。次はスカートを持ち上げなさい」

 冷酷な白鳥の指示を聞いた佳子の唇がかすかに震えた。平静さを装うながらも羞恥に歯噛みする。
 だが、今さら拒む訳にもいかない。
 足をピタリと閉じ、少しでも隠そうとしながら、ゆっくりとスカートを持ち上げる。
 むろん、そんなことで隠れるはずもなく、彼女の特徴的なぎっしりと埋まった濃い陰毛が明らかになる。

「ねえ。教室であそこをだすのってどんな気持ち」
 わざわざ床に座り込んだ白鳥が佳子のあそこを下から覗き込みながらそういった

「別に。さっきと何も変わらないわ」
 こみ上げてくる底知れない怒りに震えながら佳子は答えた。

「ふーん。そうなんだ。どうやらノーパンでいる意味がまだ分かっていないようね。なら教えてあげる。立ったまま足を大きく広げなさい」

 なにをやるつもりなのか。佳子は疑問に思いながらも指示通り足を肩幅まで開いた。

「あっ」
 足を広げた瞬間、佳子は陰部から体の中に冷たい風が入っていくような錯覚に見舞われた。
 それと同時に視界が揺れた。呼吸が早くなり落ち着かない。
 これまであまり感じたことがない感情が彼女の心を襲った
 それは不安や怯えと言った感情。

「ふふ、顔色が悪いわよ。まぁ無理もないけどね。これは女の本能みたいなもんだし」
「女性の本能?」
「つまりこういうことよ」

 そう言うと白鳥は自分の右手を佳子の大きく開かれた足の間、膝の付近を入れる。
 白鳥は佳子に一切触れていない。何もない膝の位置に、握りしめられた手がぶらんと置かれただけだ。
 それは一見すると何の意味もない行為に思えた。
 だが、白鳥の手が形を変え、その人差し指がピンと上を向くと佳子が「ひい」と小さな悲鳴を上げる。
 距離こそあるか指の先には佳子の無防備な割れ目があった。

「女の体ってよく出来ていてね。裸を見られると体が準備するの。ほらヌードモデルの時も感じたでしょう。あれよあれ」
「?」
「まだわからないかな。あそこを見られている今も起きているはずよ。体の奥底からじわっと熱いものが湧き上がり、誰のでもいいから入れて欲しい欲求が……」

「そんなことあるわけ無いじゃない!!」
 下劣すぎる話を拒絶するかのように佳子は声を荒立てた。 
 白鳥の言ってることは裸を見られることによって性的興奮を覚え、男が欲しくなったでしょうと言ってるようなものだったからだ。

「ま、処女のアンタにはまだわからないか。でも安心していいわよ。ノーパンで生活すればすぐ分かるようになるわ。名前も知らない男にアソコを見られる喜びをね」
 と、言いながら白鳥はゆっくりと立ち上がった。

「ふ、ふ………」
 佳子はスカートを持ち上げたまま肩を震わす。
 その声はとても小さいが明らかに怒りを宿していた。

「ん?なに」

「ふざけないで!」
 スカートから手を離し、そのまま白鳥の襟ぐりを掴む。
 迫る瞳には怒りに燃えていた。

「離しなさいよ。この露出狂」
 今にも殴られそうだというのに白鳥は一歩も引かない。
 それどころか笑みを浮かべている。

「くっ」
 突然、佳子が手を離す。
 自分の制服の乱れを直し、大きく一つ深呼吸をする。
 危なかったと思った。彼女は自身の心の弱さを痛感していた。
 まんまと白鳥の策に乗せられるところだったのだ。
 彼女が思わず手を出そうとしたあの時、白鳥は避けるそぶりをまったく見せなかった。
 まるで殴れと言ってるように。
 少しでも彼女が冷静でいれば気がついたはず。
 最初から仕組まれていた罠だったことに。

「ふーん。やめちゃうんだ。ま、いっか。ところで佳子のあそこ……ん?」
 再び白鳥が人を舐めた口調で喋り出す。
 しかし何かを感じたのか突然意味深な顔をし黙り込んだ。

「あ、」
 佳子も気がつく。二人の視線が教室の出入り口に向けられる。
 いつからいたのか。閉ざされたの扉の向こうに人の気配があるのだ。
 物音を立てないように座り込みながら中を伺っている人の気配が。

 佳子が『誰?』と声を掛けようとしたその時。扉が開く。

「おはよー。あれ?もう来ているんだ」
 まったく場に相応しくない脳天気な男子の声が教室に響き渡る。
 やってきたのはクラスのお調子者として知られる元木だった。

「元木くんおはよう。今日はちょっと部のことで話すことがあったので部長同士で話し合いをしていたのよ」
 先ほどまでの険悪な雰囲気は微塵も感じさせず爽やかに白鳥は話した。

「ふーん。部長さんたちは色々大変だねぇ」
 元木は白鳥に向けた微笑をそのまま佳子にも返した。

「お、おはよう」
 佳子も普段通り挨拶しようとするが、思わず視線をそらす。
 自分の頬が赤く染まっているのを感じた。
 元木は美術部でも何でも無いただのクラスメートでしかない。
 そんな男子に自分の恥ずかしいところを見られたかもしれないと思うと直視出来なかった。

「おはよ。今日も可愛いねー」
 元木はそんな佳子の様子を気にすることなく、いつもと変わらない調子の良いことをいいながら自分の席へと向った。

(見ていない?)
 佳子は元木がずっと扉の前にいて、覗いていたのではないのかと疑念を抱いていた。
 だが、元木の態度は普段のままだ。
 本当に安心していいのか。判断がつきかねず、難しい顔をしている佳子のそばに白鳥が近づく。

「佳子。放課後になったら美術部の準備室に来てね。パイパンの儀式をするから」
 白鳥は佳子の耳そばでそっと呟く。

「?」
 聞き返しそうと振り向く佳子。
 しかし、そこには既に白鳥の姿はなかった。
 佳子は今言われたことを反復する。でも意味がさっぱりわからない。
 ただ、パイパンと言う口調が、どことなくおぞまじい響きに聞こえた。

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