ヌードモデルに選ばれた姉


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「え?」
 隆の動作が止まる。姉は隆が目の前にいるというのに黒い制服のスカートのファスナーを下ろし始めたのだ。

「……」
 姉は未だに無言だ。あっちに行ってとも言わない。ただじっと弟の目を見ながらスカートのホックを外す。
 止めが無くなったスカートがそのままストンと足首まで落ちる。

 隆は目の前に晒されたものから目が離せなかった。
 姉の白い太腿はおろか真っ白なパンツまでが、もろに隆の目に入ったのだ。
 もちろん、今の彼にとって姉の裸は見慣れたものだ。
 美術室では姉の裸を見ているし、全てを写した全裸直立写真まで持っている。
 だが、外で見る姉の肌。そして家族の弟ですら見たことがない姉の白いパンツ姿は新鮮に思えた。

「ひゅ〜。白のパンツかわいいね〜」
 後ろから下級生のバカにしたような声が聞こえる。
 すると姉が体が一瞬震え、股がキュっとしまる。
 隆は小刻み震える太ももを見て、無表情を貫こうとする姉の闘いの一端を見た気がした。

「先輩ー 早く上も取っておっぱい見せてよ」
 再び男の声。
 先輩のパンツ姿に興奮したのか、下級生の盛り上がりは最高潮に達していた。
 その様子はどうみても上級生に対するものには思えない。

「お前ら、いい加減にしろよ」
 我慢の限界がきた隆は文句を言うため振り向く。
 すると、まるで弟の行動を止めるように姉がスカーフを解き、一気に上着を首から抜き取った

「おー」
 下級生の歓声。
 隆が少し目を離したうちに姉は上下を白で固めたブラパンツ一枚の姿になっていた。

「姉さん……」
 隆は悪いと思いながらも姉の下着姿を見つめた。
 創作意欲が湧く素敵な体だと思った
 華奢な肩。乳房の肉づき。胸から腰にかけての曲線。
 まさに今すぐでも書きたいと思わす魅力があった

「こらこら、何しているのよ」
 突然、隆の背後から甲高い女の声がした。

「白鳥」
 姉が一瞬敵意丸出しの表情をし、両手でブラに包まれた胸を隠す。

「あ、部長」
 隆が後ろを振り返ると、そこには白鳥部長がいた。

「全く仕方がないわね。禁止って言ったでしょ。ほら、早くそれを渡して」
 白鳥は何処か楽しそうに、自分の手のひらを開く。
 どうやらなにかを要求しているようだ。

 白鳥の言いたいことがわかったのか姉の顔が歪む。
 だが、文句は言わない。
 ただ無言のまま、手を後ろに回しブラのホックを外す。
 すると、ブラの隙間から乳房が膨らみが艶めかしくこぼれ落ちる。
 姉はやや悔しさを滲ませた表情をしながらゆっくりと乳房全体を覆っていたブラを身体から外した。

 隆にとって見慣れた肌色に透き通ったお椀型の乳房が露わになる。
 もともと肌の色が白い姉ではあったが、太陽の下で見る姉の乳房はより白く見え、薄桃色の小さな乳首はより鮮やかに思えた。

「やだ。本当に脱いでいるよ」
 後ろから、軽蔑したような下級生女子の声がした。
 姉の顔がぼっと真っ赤に染まる。どうやら女子に恥ずかしい格好を見られるのはより恥辱のようだ。

「ほら早く」
 白鳥が催促をする。 
 姉は悔しそうな顔を見せながらも温もりが残るブラを白鳥に渡した。

 姉の手の動きをじっと見ていた隆は思わず生唾を飲み込む。
 ブラを渡した姉の右手がパンツの裾を掴んだのだ。
 続けて反対の左手もパンツの裾に掛けられる
 姉は複数のいやらしい視線に眉をひそめながらもパンツを下げ、その体から取り去った。

 周囲が静まり返る。
 誰もがありえない光景に心を奪われた。
 夕方とはいえ日差し明るい学校の校舎裏に全裸の女子生徒がいる。
 しかもその女子はその丸みをおびた豊かな乳房も豪快な陰毛も隠そうとはせず立っていた。

「姉さん……」
 実の弟である隆ですら姉の姿にたじろぐ
 姉の表情に変化はない。こんな理不尽なことをやらされているんだから当然怒りの感情は見える。
 だが、今の姉の姿はそんな単純なものではないもっと得体の知れない不気味さを感じた。
 そのせいか先ほどまであれだけ盛り上がっていた下級生も今はなんの言葉もない。
 まるで姉の視線を避けるように黙りこくった。

「ほらほら、ダメじゃない。立つ時は足を肩幅まで開くようにと教えたでしょ。あとそれも早くよこしなさい」
 そんな姉のプレッシャーも白鳥には通用しないのか。
 姉の圧力を鼻で笑うように薄笑いを浮かべながらそう命じた。

「……」
 姉はゆっくりとパンツを白鳥に渡す。
 そして、足をやや開きながら直立不動の姿勢をとり、裸体の全てを晒した。

「どう。外で裸になるというのは? 気持ちいい?」
 白鳥が指先が姉の乳首に触れる。

「……モデルに触る権利はあんたに無いはずよ」
 姉が初めて反論する。
 その声は低く冷たい鋭利のような言い方だった

「おっと、ごめんごめん。規約ね。確かに『モデル中』はダメだよねー。触っていいのは撮影日だけ。だって触らないと撮影できないから仕方がないよねー」

「くっ」
 何かを思い出したのか姉の表情が羞恥に歪む。

「それにしても相変わらず豪快な毛ね。なんで剃らないの?」
 白鳥は姉の全裸を上から下まで眺めながらその濃い陰毛を指摘した。

「なにか文句でもあるの」

「別に。ただ変に思っただけ」

 隆は二人の会話を聞きながら姉の股間をじっと見ていた。
 部長の言うとおり姉のあそこは前回見た時と何も変わらない。
 豪毛と呼べる濃いものが逆三角形状に無尽蔵に広がっていた。 
 
 白鳥の疑問は隆の疑問でもあった。
 なぜ姉は手入れをしないのか。ヌードモデルの義務に縛られている今の状態を考えば毛並みぐらい整えてもいいはず。
 あんな無尽蔵を生えっぱなしを晒して余計な恥辱を受ける必要はないのにと。

「まあいいわ。ほら、中坊も何しているの。時間もないんだか早く書いた書いた」
 白鳥は引いていた下級生に指示を出す。

「は、はい」
 姉の裸を前にして、ほうけたような表情をしていた下級生たちが次々と持っていたスケッチブックを広げる。

「佳子はさっき教えた立ちポーズを取る。ほら、あんたもそんなところにいたら邪魔でしょ」
 白鳥が隆たちに向かって言う。

 姉は白鳥の方を一目見てから、ゆっくりと右手を胸の近くに置き、左手を下半身に置いたポーズを取る。
 一見すると、まるでヴィーナスの誕生のようなポーズだが、元ネタとは違い姉の手は胸も股間を隠れないギリギリの位置に置かれていた。
 隠しているようで何も隠れていない。あと少し手を動かせれば隠せるのに隠せない。
 隆にはこのポーズがモデルの美しさと羞恥心を表すポーズに思えた。

「姉さん。本当にこれでいいの」
 隆は剥き出しになっている姉の乳房を見つめながら小さな声でつぶやく。

「いいのよ。これは私と白鳥。そして学校との闘いなんだから隆は絶対に巻き込まれては駄目よ」
 姉は静かに答える。

「……」
 何も出来ない自分を悔やみながら、隆は姉の元から離れた。
 彼は自分の考えのとことん甘かったことを痛感していた。
 学校のサーバーから姉のヌード画像を消せば、全て解決すると思い込んでいた。
 だが、そうではなかった。全裸写真があろうがなかろうが、姉が学校から選ばれたヌードモデルである事実は変わらない。
 いくら本人の意志に関係なくヌードモデルになったとはいえ、これは正規の手順を取って選ばれたものなのだ。
 つまり、この状況を変えるには学校のルールを変えるような圧倒的な発言力が必要。
 そう。全国一の絵を描き、ヌードモデル義務化の校則を学校に提言した白鳥部長のような実績が必要だった。

「ほら、あんたも書きたいんでしょ」
 難しい顔をしながら姉から離れていく隆を白鳥が呼び止め、あまっていたスケッチブックを渡す。
 隆はこんなもんいらないと突っ返そうとするが上手く思考が繋がらない。
 返さなくてはいけないスケッチブックを持ちながら、頬を赤らめ羞恥の時間に耐えている美しい姉をじっと見た。

『そうだ。早く上手くならないと……』
 隆は殆ど無意識のうちに草むらに座り込り、姉の裸を書き始める。
 まず実力を付けなくては何も始まらない。今の彼にあるものは異常なまでの創作意欲だけだった。

 


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