成績最下位の生徒が全裸で走らされる話


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 とある田舎町に生徒数100弱の小規模な木造の小学校があった。
 建物は古く、周りは田んぼばかり。
 まさに昭和の異物とも言える寂れた学校であったが、いじめ等の問題はなく生徒にとって、通いやすい小学校と言えた。
 ただひとつ、妙な伝統を除けば……

 木曜日の5時限目。
 5年3組の教室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
 本日はテスト結果の発表日。
 ここの生徒にとって、テスト結果は特別な意味を持っており、誰もが授業終了後に発表するテスト結果を恐れ、身震いしながら慄いていた。

「つまり、人には添うてみよ馬には乗ってみよ、の馬とは女という説もあり……」
 もはやベテランといえる歳になった女教師は、そんな生徒の緊張をまるで気にせず普段通りに授業を進めていた。
 教師にとって、テスト発表日の雰囲気はいつものこと。
 今更、気にすることはなかった。

 授業終了のチャイムが鳴る。
 合図を聞いた女教師の手が止まり、チョークが置かれる。
 いよいよだ。生徒の間に緊張が走る。

「今日の授業はここまで。では最後に先週のテスト結果を発表します。今回の最下位は……男子の田村君でした。田村君は罰として全裸で体育館10周」

 女教師は、今回罰を受ける生徒名をサラッと発表し教室から出ていった。
 教師が去り、ざわめく教室。

「だぁぁぁぁぁぁ。また俺かー。やってしまったー」
 名指しされた田村はクラス中に聞こえるほどの大声を出し頭を抱える。
 別名ストリーキング刑。テスト成績が最下位の生徒は、裸で体育館10周走ること。
 このクラスは、こんな一風変わった罰が日常的に行われていた。

「ってかまた男なのかよ。いくら見学が自由と言っても男じゃ面白くないぞ。しかも大抵はバカ5人組の誰かだし」
 教師の発表を聞き、呆れる男子たち。
 男子たちは、今度こそ女子が裸で走る姿が見られると、期待しながらテスト結果を楽しみにしているが、裸になるのはいつも男だった。

「俺も一度走ったことがあるけど恥ずかしいんだよな」
 一人の男子が友人相手に話す。

「でも、見学が自由と言っても、暇な男が見に来るだけで、女子は来ないんだから別にいいじゃないか」
「いや、一人だけ必ず見に来る女がいるんだよ。ほら噂をすれば……」

 男子たちが話しているところにボーイッシュな雰囲気を持つ短い髪の女の子が割り込んでくる。

「今回の最下位は田村ね。久しぶりにその小さなチンコを見てあげるから覚悟しなさい」
 ザマーミロと言わんばかりに勝ち誇った表情を見せながら田村に向かって指をさす一人の女の子。 
 女の子の名前は七瀬美代。黙っていれば可愛い子といえる容姿をしていたが、その性格はまさにガサツの一言。
 今回もその勝ち気な性格を表すがごとく、普通の女子なら恥ずかしくて言えないようなことを、ズバズバと男子相手に喋っていた。

「七瀬。また見に来るつもりなのかよ。来るな。アホ女」
 七瀬の挑発に乗らないようにしながら田村が言い返す。
 田村はバカ5人組の中でも、特に成績が悪かった。
 裸で走った回数も、4回と他の生徒よりも遥かに多い。
 それはそれだけ七瀬に裸を見られた回数も多いことを意味していた。

 七瀬は田村にアホと言われても涼しい顔をしながら、
「本音を言うとこのバカ5人組の裸はもう見飽きたから、たまには違う男子の裸も見たかったんだけどね。この5人はちんこの大きさも大差ないしー」と嫌味っぽく言った。

 その台詞を聞き、顔を赤くする友人たち。
 ここにいる田村の友人たちは、多かれ少なかれ、みんな七瀬に裸を見られている。
 そのためか七瀬を苦手としていた。

「うるっさいな。同じぐらいの点数のバカに言われたくないぞ。そんなに男のちんこが見たいのかよ」
 もう体の隅々まで見られている田村が反論する。
 田村は他の男達とは違い、それほど七瀬のことを苦手とはしていなかった。
 むしろ、気になる女の子と言える感情を抱いていたが、こうも一方的に裸を見られてバカにされていては、そんな思いに気がつくはずもなかった。

 七瀬は少し顔を赤くしながら、
「そんなもん興味ないわよ。ただ男の子が恥ずかしがって情けない顔をするところが見たいだけ」と、言いながら最後に舌をぺろっと出す。
 思いっきり嘘な雰囲気。彼女が男の裸を見たくて来ているのは明らかだった。

「そんなこと言って、いつも俺のチンコをマジマジと見るくせに。この変態女」
 その白々しい七瀬の嘘に田村が文句を言う

「誰が変態ですって。見学は自由と言われていることを忘れたの。罰を見に行って何が悪いのよ」
「それでも普通は見に来ない。わざわざ来るのは空気が読めないバカなお前だけだ」
「見ないと罰にならないじゃない。田村のためにその貧相な小指チンコを見てやっているんだから感謝してほしいぐらいよ」
「なんだとー」

田村と七瀬が言い争っているのをただ眺める友人たち。
「これって、やはりあれだよな」
「ですよねー。早く終わらないかなぁ」
 この2人の喧嘩はいつものこと。
 止めに入っても痛い目を見るのはわかっているので、ただ終わるのを待つ友人たちであった。

放課後
 全授業が終わりと田村は友人とともに体育館へと向かった。
 決められた罰の遂行するためだ。
 期限は特に決められていなかったが、田村は結果が出たその日にやることにしていた。

 体育館に着く。
 大きな扉を開けると七瀬が跳び箱の上に座っているのが見えた。
(やはりいたか)
 田村はその姿を見て大きくため息を付いた。

 七瀬は田村を見るなり、跳び箱から降りて急いで駆け走る。
 そして少し小馬鹿にしたような表情で、
「遅かったわね。逃げたのかと思ったわよ」と言った。

その言葉を聞いた田村は、
「逃げるわけ無いだろ。バカにするなよ」と珍しくムキになって反論した。

 この罰は自己申告制である。
 つまり実際に走らなくても、走ったと先生に言うことは可能ではあったが、そんなことをする生徒はいない。
 嘘をつくというのは、裸で走ることより恥ずかしいことの考えが生徒間でも定着しており、田村は自分がそんな卑怯者と思われたのが、何よりも許せなかった。

「そうね。今の言葉は取り消すわ。変なこと言ってごめんなさい」
 七瀬は、素直に頭を下げて誤った。
 田村はバカだが、卑怯者で無いことは七瀬が一番知っている。
 完全に彼女の失言だった。

「じゃ、俺たちは体育館から出ているから走り終わったら呼んでくれ」
 友人たちは、いつものように体育館から出ていく。
 むろん、見ていてもいい決まりてはあるが、男が男の全裸走りを見ても楽しくないので、外で待つのがお約束になっていた。

 扉を閉めると体育館から七瀬の声が聞こえた。
「ほら、早くいつものところで脱いで……」
「やっぱ他の男子より小さいよね。体が大きいとあそこの成長は遅いのかしら……」
「はは、ぶらぶらさせながら走らない」
「……」

5分後。

「あー、楽しかった。田村の裸を見るのも5回目だけど相変わらず可愛いね」
「うるっさいなー。早く出ていけよ」
「はは、今更隠しても意味ないって。それじゃ次のテストも楽しみにしているわよ。じゃーねー」

 ちょっとだけ顔を赤くした七瀬が体育館から出ていく。
 その姿を見た友人たちがすれ違いざまに体育館へと入っていった。

「田村、終わったのか」

「くそ。悔しいな。なんとかならんのか」
 田村は急いで服を着直し、右手で床をドンと叩く。
 先生が決めたこの罰に文句をいう気はなかったが、いつもいつも七瀬に裸を見られるのは勘弁して欲しかった。

「無理だろ。女子はハンデとしてプラス20点与えられているからな。50点取っても70点と同じだ」
「この罰は女子が脱がないように出来ているんだよ。ひきょー」
「でも次は算数だろ。この前のテストでは女子最下位の七瀬との差が15点まで縮まった。つまり七瀬が30点以下を取り、全て男子が50点以上取れば勝てる」

 田村は立ち上がり大声で言う。
「そのためにも勉強だ。俺たちはみんな七瀬に裸を見られている。今度は俺たちがアイツの裸を見てやるんだ」
「おおおおお」
 それにつられて妙に盛り上がるバカ五人組。
 裸を見られた恨み。そして七瀬の裸を見たい好奇心。
 その一心で勉強に励むことを誓う男子たちであった。

 二週間後。
 テストは無事に終わり、いよいよ発表当日。
 男子の誰もが不安な顔をし、女子は他人事とばかりに気楽な雰囲気。
 それは一見するといつものテスト発表日と同じ教室の空気に思えた。
 だが、バカ5人組だけは違った。誰もがやれたはずという自信みなぎる顔をしている。

「はい、注目。先週のテスト結果を発表します。今回の最下位は……」
 5年3組の女教師は、いつものようにテスト結果を発表する。
 バカ5人組にとってこの瞬間は誰が裸で走るのかを怯える瞬間であったが今回は違う。
 七瀬を裸で走らす計画が成功したかどうかがわかる運命の瞬間だった。
 そんなことも知らずに、好奇心たっぷりの顔で結果を待つ七瀬。
 彼女にとっては次は誰の裸が見られるかの瞬間でしか無かったからだ。

 女教師が田村を顔を見てニコって笑う。

(今のは一体。また俺なのか)
 担任の意味深な表情に田村は不安を覚えた。
 そんな気持ちを知ってかしらずが教師は「女子の七瀬さんでした!」と大声で言った。

「えーーうそー」
「やったー」
 ざわめく教室。驚きをあまり固まる七瀬。
 20点のハンデがひっくり返された瞬間だった。

「はいはい、静かに。今回は初めての女子ですがルールの変更はありません。いつもと同じで見学は自由。後で走ったと申告すること。以上です」 

(ふふ、最高の結果になったわね)
 女教師は、男子ばかり裸になる今の状態は良くないと前々から考えていた。
 本来なら七瀬は何度も裸を見せないといけない成績だったのに、ハンデシステムのお陰で脱がずに済んでいだ。
 これでは七瀬、いや女子のためならない。
 女子への示しのためにも、成績が悪い七瀬の裸をなんとかして晒さなくてはいけないと考えていただけに今回のバカ5人組の頑張りは嬉しい誤算だった。

 もちろん頑張った男子へのご褒美も忘れない。
 あえて見学自由のルール変更はないと宣言し、男子たちに七瀬の裸を見てもいいことを伝える気配りもした。
 女教師は長く続いた懸念が解決し、満足げに教室を後にした。


for / 2015年01月25日
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